この作家は言う、土そのものの質感「柔らかい」に拘る作品には人それぞれには与え
られた命の時間があり 、
自分自身を俯瞰て見て日常的な自分と身の回りのものを表している。 彼にとって陶
芸は自分を表現する手段であり、単なる道具に過ぎない。何を表現するかが最も大事
だと、彼は語る。
時計をモチーフにした思索的で重厚な作品である。棚の中に収められた黒陶のオブジ
ェの一つ一つが宙に浮かんでいて説得力がある作品。
彼は言う「私に仕えると同時に私を支配する日常的な物の中で時計は最も豊かな意味
を持っています・」と
古川は陶芸家と呼んでいいのだろうか?
あるいは造形作家と呼ぶべきだろうか?
彼の作品は美術館などで何度も見てきた。
これまで、一点一点の作品を見た時
面白い作品を作る人だと思った
今回の個展では、彼の作品は大きな広がりと深みを持つ作品として現れていた。
空間が現実とは異質な空間になっている。
個展のテーマになっている「時間の肖像」に示されているように、
古川は土で時計を制作している。
この壁面作品は時計の針を無くした時計が数十個押しつぶされひしめき合っているいて これらの時計は時刻を示す時刻の数字が無い。この大きな作品は、時間の喪失という形而上的なテーマに臨んでいると思われる。
壊れた時計の塊は それだけ多くの彼の時間、あるいは過去が失われたような絶望感すら感じる。
この作品の中に1つだけ時を刻む時計がある。
この生きた時計は 他の全ての壊れた時計も、
以前は時を刻んでいたことを想起させる。
それはかすかな希望を感じさせる。
芸術作品は私達に感動を与える大きな要因に、
それが日常性を越えた独自の世界観を表現している事がある。
古川の作品は、会場の空間全体で、その体感をさせてくれる。
美術館学芸員